地域との協創による土肥地区再興にむけて
耕作放棄地を黄金に—
土肥の里山景観再生とともに新たな農業振興プロジェクトを立ち上げます

はじめに

 

私たち青木興業は昭和8年(1933年)、この土肥の地で産声をあげました。製材業から始まり、住宅、建設、そして公共インフラ整備工事へと、土肥はもとより地域、そして伊豆の発展のために90年間にわたり様々な形で「まちづくり」のお手伝いをしてまいりました。

しかし現代では過疎化・少子高齢化はますます深刻化し、地域経済全体も縮小傾向にあり、限界集落手前の危機的状況にあるといえます。とりわけ、空き家の増加、耕作放棄地の増加は美しい土肥の街並みや里山の原風景を崩し、何もしなければ土肥地区の魅力はさらに失われていくこととなります。

 

平成27年(2015年)「まち・ひと・しごと創生基本方針」が閣議決定され、伊豆市土肥地区でも県外からの企業(ロクワット西伊豆の土肥観光活性化(株)/土肥集学校の(株)リングロー)が参入し、地域と連携しながら独自ブランドを立ち上げる新たなサービスが展開する動き、また、近年の新型コロナの蔓延でテレワークやオンラインミーティングが普及し、今の仕事を続けながら移住することが可能となり、快適なワークライフバランスを求めて若者や子育て世代の地方移住が活発化するなど、数年前にはなかった企業や個人の流れがでてきています。

弊社におきましても、令和3年(2021年)より長年培った建築のノウハウを活かし、空き家問題に本格的に取り組んでおり、移住者向けのお試し住宅として空き家を改修し、無料で滞在していただきながら土肥のまちを案内するなど、伊豆市やNPOと連携しながら移住定住促進に努めております。

こうした社会的な新しい動きは持続性を危惧する地域にとってとても心強いものであり、様々な交流が育まれることで以前とは違った地域活性化が期待できるものでありますが、依然、陸の孤島ともいえる土肥の立地条件や限られる就労機会の場は根本的な解決に至らず、地域に根ざす企業として多角的な取り組みの必要性を感じ、未来への第一歩となる「新たな事業計画」を立ち上げることと致しました。

地域課題解決を通じた新たなCSR(社会的責任)事業推進

土肥・八木沢地区では、かねてより地元の有志による国道沿道の耕作放棄地の活用により、菜の花畑やひまわり畑、ハスの花々で沿道が美しく彩られ、地域の方々や来訪者に大変喜ばれてきました。また廃校となった旧土肥南小学校もこの有志の方々により芝生広場に整備され、南小記念広場として再生、景観向上と地域住民の憩いの場となっています。

このように観光地化も大切ではありますが、地域住民が地域に魅力を感じ、心豊かに暮らせること、そして地域住民から地域を変えていく姿勢が持続性を考える上で重要な視点と考えます。新たな事業を展開するにあたり見えてきた戦略— それは地域住民との「協創」、そして地域を巻き込んだ「持続可能な地域経済循環」のプラットホームづくりです。

今回の事業計画では今後さらに拡大が見込まれるこの八木沢地区の広大な耕作放棄地を活用し、地域に根付いた柑橘栽培のノウハウをベースに生産性と収益性の高い品種を栽培する「柑橘農園」として再生、さらには富士を望む美しい農園景観の保全と新たな雇用創出、地域ブランドの創出、観光サービス産業との連携、地域コミュニティの活性化を図り、地域住民と企業とが連携して地域の持続化にむけた新たな基盤を築いていきたいと考えております。

土肥地区は子どもの進学や就職で家族ごと転出される方が多い地域です。私たちの事業の中長期的な目標には、本事業の推進が地域の魅力を高め、地域で育った子ども達がUターンしやすいような環境づくりに貢献したいという思いもあります。たとえUターンしなくともいつまでも心の原風景となるような景観を未来に残し、柑橘が故郷を物語る食材となるように、そんな思いを込めて2022年1月から6種類の柑橘の植栽を始めています。

農業振興を視野に入れた地域づくりが次の世代へとつながるよう、地域の皆様のご理解・ご協力をいただき、ともに土肥の未来を築いていただきたいと思います。